2011年8月3日水曜日

猫の恩返し



大きなお腹をした野良の雌猫が、足元でなんとも哀れな顔をして、ニャ~と鳴いた。
「うん?子どもを産むとこがないのかえ?」
縁の下を開けてやって、古い布きれを一枚敷いてやった。
間もなくして、子猫を3匹、産んだよ。

しばらくは猫マンマを作ってやって、与えてたんだけど、そのうち雌猫は外へ出て行ったんだ。
すると、ネズミくわえて帰ってきたね。
ポトリと目の前において、わたしにくれるというんだよ。
折角だけどいらないよ、わたしゃ気味が悪いよと言うと…。
次の日には鰺の干物をくわえてきたのよ。

それからもいろんなものをくわえてきたね。
塩鮭、イカ、宝くじ、仏壇に供える花、線香の箱、蝋燭、数珠と経本。
宝くじは当たってなかったよ。
「ところで、なんで仏壇物なのよ」
「あたしが毎朝、お仏壇の前でお経をあげるから、喜ぶと思ってくわえてきたみたいよ」
「ふ~ん」
「………」
                      深川にゃんにゃん横町 -宇江佐真理-


端唄を一曲

売名節
 ♪ 金魚を売りにやったら 売り名を忘れ 
    お酒に酔った お魚なんぞを 買わしゃませんかいな  
     *ヤレコラサ ドッコトナ*

 ♪ 炭団を売りにやったら 売り名を忘れ 
    大仏さんの目の玉なんぞを 買わしゃませんかいな  
     *ヤレコラサ ドッコトナ*

 ♪ 朝顔を売りにやったら 売り名を忘れ 
    盃じょうごの違ったのを 買わしゃませんかいな
     *ヤレコラサ ドッコトナ*

 ♪ むしろを売りにやったら 売り名を忘れ 
    乞食の絹マントを 買わしゃませんかいな 
     *ヤレコラサ ドッコトナ*

 ♪ 長持ちを売りにやったら 売り名を忘れ 
    仁王様の弁当箱を 買わしゃませんかいな 
     *ヤレコラサ ドッコトナ*


S・R-20*5、ST*2、W30*1、DB10*5、F12*6

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