2010年9月29日水曜日

私は貝になりたい

( 奥さん「房江」の必死の嘆願署名のワンシーン)
  
若い頃、一度テレビで見たドラマ
  もう一度、見たいと思い、レンタルショップでビデオを借りた。
  
  BC級戦犯で死刑執行となった主人公は12歳で床屋の丁稚小僧
  奥さんと血の滲むような苦労をして、やっとの思いで床屋を
  開業して、これからというときに「赤紙」
  戦地に行って、上官の命令によって
  捕虜を殺害(実際は殺害してはいないのだが…)
    
戦争が終わり、復員、平和に床屋を再開…かと思われたが  
  突然MPによって逮捕、そして軍事裁判
  上官の命令は天皇陛下の命令、その命令に
  背くことは銃殺に値する。
  彼は二等兵、日本の軍隊の中では牛・馬の扱いのごとし。
  しかし、判決は有罪、絞首刑
    
死刑執行の前夜、遺書を綴る
    
房江 健一  さようなら
………
………
もう一度会いたい
もう一度みんなで暮らしたい
………
でももうそれも出来ません。
せめて生まれ変わることが出来るのなら・・
いいえ お父さんは生まれ変わっても人間になんかはなりたくありません。
人間なんて嫌だ
牛か馬のほうがいい
いや牛や馬なら また人間からひどい目に遭わされる
どうしても生まれ変わらなければならないのなら
いっそ深い海の貝にでも・・
そうだ貝がいい
貝だったら深い海の底の岩にへばりついているから
なんの心配もありません
兵隊に取られることもない
戦争もない
房江や健一のことを心配することもない
どうしても生まれ変わらなければならないのなら
・・・わたしは貝に・・・
………
………
・・・私は貝になりたい
    
  人というものは血の滲むような努力で家族の生活を支え生きている。
しかし、ある日人間を人間扱いしない日本の軍隊によって
なにもかもずたずたに引き裂かれ、
その結果絞首刑にされる。
戦争の理不尽さがゆえに究極の人間不信に陥る
どうにもならない悲劇だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿