18世紀末、南フランスのアヴェロンの森で、素っ裸の少年が発見された。
推定年齢11、2歳、ヴィクトールと名付けた。
彼は人間の言葉も習慣もすべてを失っていて、教育をしたが、効果はみられなかった。
…ある朝、彼がまだ床の中にいたとき、大雪が降った。
すると目が覚めるや歓声を挙げて床を離れ、窓辺へ走り寄ったり、戸口へ走り寄ったり、何度も往き来したあと、とうとう衣服も着かけで庭へ突進した。
庭ではつんざくような叫び声で歓びを表現し、雪の中を走ったり、転んだりし、手にいっぱい雪を集めて何ともいえぬ熱心さでそれを楽しんだ。
いつも退屈で、単調に体を揺すってもの悲しげに野原を眺めているヴィクトール。
突然に歓びを爆発させた。
北国のこころ-高田宏-
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