白神の森の主役はブナだが、孤立しているわけでも
、君臨しているわけでもない。
ところどころに、ツルに絡まれたブナがある。
ツルは英語で「ストランダー」(シメコロシノキ)と呼ばれるものもある。
時にはブナは文字通り絞め殺され枯れてしまう。
ツルの目的は、ブナを伝って一刻も早く太陽の当たる樹冠に至り、
そこで自ら光合成を始めて繁茂することである。
合理的ではあるが、はた迷惑な戦略。
自分がブナだったら、ツルが突然自分に巻き付き始めたら
どんな思いがするだろう。
森という豊かな生態系の中で、様々な生きものがせめぎ合う。
それは決して「予定調和」というようなものではない。
異種の生物の出会いは変形や、病気や、死や、侵略や、
撤退や、共生や、融合や、様々な変貌を意味する。
濃密な相互作用の中で、一つひとつの生命体の自己同一性は揺るがされる。
一つのものが永遠にそのものであり続けることはできない。
それが森の真実である。
日本のクリア-茂木健一郎-
写真-大峰山・稲村小屋-
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