義母を連れて、義父の寝る病室へドアを開けて入った。
義父の第一声は「健康保険証が見あたらん、昨日、洗濯物を持って帰った
なかにシャツが入ってたと思うが、そのポケットに入れていた。
洗濯してしまったのか、えらいこっちゃ、探してくれ!」と言う。
昨日の洗濯物は家に持って帰ったが、
タオル類のみでシャツは持って帰ってない。
そのことを伝えても、必死の形相で探してくれという。
義母がオロオロしながらロッカーを探ると直ぐにシャツがみつかり
ポケットから保険証が出てきた。
義父の手術後は順調に回復していて
トイレにも歩いていけるし、自由に動ける。
義母は糖尿病で血糖値低く、ときどき倒れたりする。
病室に訪れるなり、いきなり義父は義母にこの調子で命令する。
義母は一気に体調を崩し、肩で息をしだした。
義父は保険証がみつかったことに安堵して喜んでいる。
慌てて義母を家に連れて帰り、努めて安静にすることにした。
義母が少し落ち着いて、呟いた。
「父ちゃんはいつもこの調子…」
今に始まったことではないらしい。
夫婦というもの、妻は夫の奴隷なのか、と思いたくなるこの光景
我がこととして受け止めなければならない。
明日は義母は家でいてもらうことにした。